「睡眠負債」に要注意
毎日の寝不足が「睡眠負債」となって私たちの体にどのような影響を与えるのかをお話しています。

「睡眠負債」に要注意

突然ですが皆さんは「睡眠負債」という言葉をご存じですか?

 

睡眠負債とは日々の睡眠不足が借金のように積み重なることをいいます。この睡眠負債が積み重なると私たちの身体には様々な影響がでると考えられています。なかでも注目されているのが認知症との関係です。

 

2025年には日本人高齢者の5人に1人がなるといわれている認知症。「だれもがなり得る病気」であることをシッカリ知っておかないといけないわね

 

私たちが脳を使うとき、脳にはそれと比例して老廃物がたまります。それを効果的に除去してくれるのが睡眠です。脳の中にある脳脊髄液が水の取り込みを行い、老廃物を洗い流します。

 

睡眠中はこの働きが、起きているときの4~10倍ほども活発になります。日中の老廃物除去だけでは追い付かず、睡眠中のまとまったメンテナンスが脳をクリアにするのです。

 

脳の老廃物がきちんと排出されないと、アルツハイマー型認知症を引き起こす可能性があるといわれています。

 

睡眠中の女性米国・スタンフォード大学で睡眠生体リズム研究所所長の西野精治先生の行った実験によればアルツハイマー型認知症になりやすい遺伝子をもったマウスの睡眠を制限すると、アルツハイマー型認知症の原因物質の1つである「アミロイドβ」がたまりやすくなることがわかりました。

 

 

アミロイドβは、寝ているときに効率よく除去されますが、ずっと起きていると排出されないままになります。通常であれば眠ることでアミロイドβは排出されますが、慢性の睡眠不足の場合 脳の中にアミロイドβが沈着してうまく排出されなくなります。

 

また、国立精神・神経医療研究センターによる「昼寝の習慣と認知症の発症リスク」の解析では、30分未満の昼寝をする人は、昼寝の習慣がない人に比べて認知症発症率が約7分の1でした。30分から1時間程度の昼寝をする人も、昼寝の習慣がない人に比べて発症率が約半分でした。この結果から、仮眠をとるなら20分程度にするのがベストだといわれています。

 

さて、ここまでのお話しで睡眠不足の影響についてはご理解いただけたかと思います。ではその「睡眠負債」はどのように解決していけばよいのでしょうか。
日頃の睡眠不足を解消するために週末の寝だめを行っている人は少なくありません。しかしそれでは、睡眠負債が解決しないことが分かっています。

 

実験によると、自分に必要な睡眠時間が毎日40分不足する生活を長く続けていた場合、この睡眠負債を返すためには 毎日14時間ベッドにいるのを3週間続けなければなりません。

 

しかし現実にはこのような睡眠時間を確保することは難しいため、いかに睡眠の質を高めるかが重要となってきます。

 

日ごろの睡眠不足を解消したいと思っても、時間に追われる毎日では難しいわ。睡眠の質を高めるためにできる 心がけはあるのかしら?

 

そのためには寝始めの90分で、いかに深い眠りを得られるかがポイントになります。私たちの睡眠リズムは入眠から約90分間ノンレム睡眠が続き、90分後に最初のレム睡眠があらわれます。

 

6~7時間眠る場合は、90~120分のスリープサイクルを第4周期まで4回ほど繰り返すことになります。そしてその眠りの質は、最も深い第1周期の質で決まります。

 

骨の増殖、細胞の成長、アンチエイジングなど大人の健康維持にも大切な成長ホルモン。その7~8割が分泌されるのが最初の90分のノンレム睡眠です。

 

それだけでなく、免疫力アップや脳の老廃物排出にもこの最初の90分のノンレム睡眠が大きな役割を果たしています。

 

何時間寝ても最初の90分がくずれれば、眠りの質も総崩れになります。しかし逆をいえば、最初の90分の質が高ければ眠り全体の質も高くなるといえるのです。

 

そのため「寝たら最初の90分は絶対起こさない」がスタンフォード式睡眠術の鉄則なのだそうです。皆さんも毎日の生活で20分程度の昼寝や、就寝後90分の大切さを取り入れてみてください。