沈黙の臓器とよばれる肝臓
自覚症状がなかなか現れないことで有名な肝臓。そんな肝臓の病気を早期に発見するための簡単な自己チェックなどをご紹介しています。

「沈黙の臓器」とよばれる肝臓

肝臓のイラスト
皆さんは自分の肝臓について気になったことはありますか?実は、肝臓は重さが約1.2~1.5キロという体の中で最も重い臓器です。その働きは500以上あるといわれ、「人体の化学工場」なんてたとえがされるほどです。肝臓の働きのなかで、特に重要な仕事は3つあります。

 

①栄養素の代謝
私たちが食べたものは胃や腸で消化・吸収され肝臓に運ばれます。糖質、脂質、たんぱく質をはじめ、さまざまな物質は、肝臓で「生命維持に
必要な物質」に作り変えられたり、体内で利用できるように再合成されたりします。

 

②解毒
肝臓は血液中に入り込んだ有害物質を分解し、体に無害な物質に変えます。アルコールや大腸菌が作るアンモニアなどの有害物質も、肝臓が解毒します。無害化された物質は、尿や便と一緒に排出されます。

 

③胆汁の分泌
脂肪の分解・吸収を助け、体内の不要な物質を便と一緒に排出します。便が黄色いのは、胆汁に黄色の色素が含まれているからです。

 

このように大切な役割をもつ肝臓ですが、その一方で忍耐強い臓器ともいえます。少々悪くなっても気が付かず、機能が3分の1以下になって初めて自覚症状が現れます。そのため肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれるのです。

 

早期に肝臓の病気を発見するには、定期的な健康診断が欠かせません。まずは9つの自己チェックを参考にして自分の肝臓について考えてみましょう。

 

【9つの自己チェック】

□食べ物のにおいで吐き気を催す
□朝起き抜けの尿が、紅茶のような色
□38度以上の熱が続く
□食欲がない。油物が食べられない
□痔になった
□だるい。特に夕方に悪化
□以前のようにお酒を美味しく感じない。飲みたくない
□夜に目がさえ、不眠ぎみ
□ダイエットしていないのに体重が減少

 

当てはまる項目が多い人は注意が必要です。
肝臓病と照らし合わせてみてみましょう。

 

●急性肝炎
急性肝炎の初期症状に、吐き気や食欲の低下、38度以上の発熱などがあります。また、黄疸が出る前に尿の色が濃くなることがあります。特に朝の起き抜けの尿は紅茶のような色に変化します。

 

●慢性肝炎
食欲が低下し、油物がほしくなくなります。常に体がだるく、特に夕方になると症状が強くなります。また、肛門周囲の静脈の血液循環が悪くなり、痔を患うこともあります。

 

●アルコール性肝炎
アルコールによって肝機能が低下し、お酒がおいしく感じられなくなり、飲みたくなくなります。

 

●薬剤性肝炎
薬のアレルギーで肝炎をお起こしていると、38度以上の発熱が続くことがあります。

 

●肝硬変
肝機能の低下により、体がだるく疲れやすくなります。お酒が美味しく感じられなくなり、食欲も低下し、やせることもあります。肝臓の血流が悪くなり、肛門周囲の静脈血も滞り、痔になることもあります。肝硬変の合併症の肝性脳症になると夜に目がさえ、昼間に眠くなることもあります。

 

●肝臓がん
食欲がなくなり、揚げ物などの油物がほしくなくなります。体重が減少する場合は注意が必要です。

 

このような自覚症状に心当たりの多い方は、早期の発見・治療のためにも検査を受けることがとても大切です。

 

よく耳にするB型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎については地域の保健所や指定医療機関で「肝炎ウイルス検査」のご相談をしてみましょう。脂肪肝から起こる肝炎の発見については、「肝生検」や「エラストグラフィ超音波検査」などがあります。気になる方はぜひ対応可能な医療機関を探してみてください。